痛みは誰にとっても嫌なものではありますが、ちょっと見かたを変えてみると大切な役割があるのです。病院で診断してもらっても異常なしと言われてしまうような痛みでも、意味があるのです。このページでは痛みの役割について解説いたします。
1.痛みはカラダからの注意信号!
1)痛みがなければ
「痛みは、実質的または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはこのような損傷を表わす言葉を使って述べられる不快な感覚・情動体験である」と1979年に国際疼痛学会によって定義されています。
何か難しい言い回しですが、要するに「痛い!」という感覚です。
誰もが痛みに苦しむと「痛みなんかなければいいのに!」と思ってしまいますよね。しかし、この「痛み」は我々が生きていく上でたいへん重要な役割を果たしてくれているのです。
たとえば、「先天性無痛無汗症」という病気があります。
名前のとおり、痛みを感じず、汗もかかないという症状の難病です。症状のレベルには個人差がありますが、痛みや熱さ、冷たさの感覚を全く感じ無い人から、少しは感じる人もいるようです。
先天性のために自分の身体が傷つくということが理解できず、感覚が無いために知らぬ間に自分の舌を噛み切ってしまったり、舌で歯を押し出して歯が抜けてしまったり、指をしゃぶっているうちに手に穴を開けたり指を食いちぎってしまったり、目をこすっているうちに失明してしまうというようなこともあるようです。
歩くだけで脚の関節を壊してしまったり、骨折、ねんざ、脱臼などを繰り返し、それでも痛みを感じないので、そのまま走り回ったり飛び回ったりして、どんどん症状を悪化させてしまうようです。
誤って大やけどをする危険性もあります。
しかし、先天的な症状であるために、それらの危険を学習することはむずかしいのです。
このように痛みは嫌なものですが、痛みがないことはけっして喜ばしいことではなく、命にも関わるたいへん危険なことなのです。
2)痛みの意味を考える
手足の関節を無理に曲げようとすると痛みを感じます。それは、これ以上曲げてしまうと身体が壊れますよという注意警告です。また熱いものに触れると、反射的に手を離したり、遠ざけたりします。これもまた身体を守るための注意警告なのです。
痛みは4-6週間以内持続する急性疼痛と4-6週間以上持続する慢性疼痛に分類され、現在の医学や生理学の中でも、痛みはカラダの危険を知らせるシグナルとして有用であると考えられていますが、残念なことに、これは急性疼痛のみで有効な考え方であり、慢性疼痛では痛みの原因と考えられる危険が全く存在しないことも多々ある、とされてしまっているようです。
つまり、主に慢性の痛みが知らせようとしている、体のゆがみやバランスの乱れは、医学や生理学のなかでは全く考慮されていないということです。
もちろん急性の痛みの中にも、体のゆがみとバランスの乱れを知らせているものもあります。
痛みは現状の医学が把握している以上に、身体の危険を知らせてくれるシグナルなのです。
3)慢性の痛みはカラダのお知らせ
慢性の痛みが知らせているその状態は、実際に身体はそれほど危険な状態とも言えない場合が多いので、痛みを感じているその人自身も、その痛みそのものを病気だと捉えるばかりで、本来カラダが知らせようとしているその痛みの意味するもっと深いところには気づいていないのです。
しかし、みなさんが本当に悩んでいるのは慢性の痛みではないですか?
急性の痛みの多くは、怪我、病気など原因のわかっているものであり、検査などの結果、医療の中で時間が改善、解決してくれます。
しかし、慢性の痛みに関しては、検査をしても異常が見当らない場合がほとんどで、その適切な治療法もなく、鎮痛剤などの薬剤にたよるばかりのようです。
中には何年も薬を飲み続ける生活をしている人もいるようで、時間が解決してくれるということも期待できません。
これだけ医療が発展していく中で、何か足りないもの、足りない考えがあるということに気づかなければならないと思います。
医療というルールの中で、まだ見つけてもらっていない大切なもの。
それは、「カラダからのお知らせ」です。
注意・警告やシグナルといった大げさなものではありません。
お知らせ、です。
すぐになんとかしなければ大変なことになるというような状態ではありません。だから医療の中では見つけてもらえないのです。
検査をしても正常、本人に聞いても特に問題なし、というそんな状態。
しかし、身体は問題ありませんと言いながら首や肩を回している??あれ?
「いやー、肩はパンパンに張っているんですけどね。」
それですよ、それ。
問題なしじゃないですよね。
それが、お知らせ。カラダからのお知らせです。
緊急を要する状態ではありませんが、それを放置することで次第にそのお知らせは痛みに変化していきます。
なんとなく体がだるい、というその感覚もお知らせのようなものです。
「体にゆがみがありますから、このまま使うには無駄な力が必要ですよ。」
という代わりに、だるい、という感覚をカラダが感じさせてくれている。
体がだるければ、すすんで何かをしようとは思わないですよね。軽くストップをかけてくれているのです。
本来ならここで体のゆがみやバランスを整えて、スッキリしたところで動き出すべきなのですが、そのお知らせに気づくはずもなく、人は無理をしてゆがんだままの体で動きだしてしまいます。
その結果、自覚はありませんが、必死にバランスを取らなければならない体になってしまっているのです。無駄に力を使わなければならなくなり、一部の筋肉がパンパンに張ってしまいます。
これもまた次の段階でのカラダからのお知らせです。
この段階でもまだ危険な状態とまではいきませんから、みなさんせっかくのお知らせを聞きのがしてしまっている、というのが現実です。
実は慢性的な肩こりも、カラダからの注意信号のひとつです。
2.カラダの声を聞きましょう
1)聞こえますか?カラダの声
プロレスや柔道の技のひとつに、逆関節技というものがあります。ヒジを逆に曲げたり足首の関節を逆にねじ上げたり。これでギブアップや一本取るぐらいですから、かなりの痛みなわけです。これもまたカラダの声。かなり大きな声なのでよくわかります。聞き逃す人はいないでしょう。
「これ以上曲げると身体が壊れますよ!」というカラダの声です。なかなか我慢なんてできませんが、我慢すると骨折したり脱臼したりします。
「あーあ、だから言っているのに…。」って感じですね。
忘れてはならないことは、このカラダの声はその人にしか聞くことができないということです。その人自身が感じている感覚だからです。
それが、カラダの声。
体を無理して動かした時の痛みや、急性の痛みは実際に激痛なので、カラダの声よりも実際に大声で叫びますから、それは誰にでも聞こえます。
問題は慢性の痛みという症状でお知らせしてくるときのカラダの声です。
実際には、この小さな声に気づかないために、みなさんは苦しんでいるのです。
この声は誰にも聞こえません。
あなたのカラダの声は、あなたにしか聞こえないのです。
2)自分の声は自分で聞こう
急性の痛みを伴う症状は、身体の危険を知らせるシグナルとして有用性があるという考えが医学にはありますから、医療に任せることができる身体の状態や病気は、任せておけばいいのです。
問題は、有用性がないと思われている慢性的な痛みや、痛みに至るまでの状態、さらにそれ以前の感覚です。これは医療の中での検査でも異常として扱われないし、なにより自分自身以外の人がこの感覚を理解することは不可能です。
つまり、この小さなカラダの声が知らせようとしてくれている身体の異常は、自分自身でケアしなければならないということです。
なんとなくだるい、身体の違和感、力が入らない、力を抜けない、疲れがとれない、動かしにくい、身体が重い、ツッパリ感、筋肉の張りを感じる、腫れているような感じ、鈍い痛み、そんな感覚の全てが実はカラダがあることを知らせようとしているお知らせなのです。
それが体のゆがみやバランスの乱れです。
そして、それに気づき理解することで、自分自身で簡単に改善できるようになります。
3.カラダの声が聞こえてくると痛みがなくなっていく
1)カラダに逆らっていませんか?
身体のたくさんのパーツには、それぞれにスイッチとボリュームのようなものがあり、機能のオンとオフ、またレベルのアップダウンを常に脳でコントロールしています。自覚はないと思いますが、24時間常に自律神経が働いて、身体の監視と調整をしてくれています。
ただし、すべてのパーツをいつもいい状態に保ってくれればいいのですが、そこまで甘くはありません。
しかし、ちゃんとその都度その時の状態を知らせてくれています。
ご存知でしたか?
たとえば、右足の調子が悪くて本来の力が出せないでいるとき、左足を頑張らせて、その左足に違和感や痛みをだして知らせてくれます。
また下半身のバランスが乱れているとき、上半身をしっかり支える代わりに腰に痛みを出して教えてくれます。
「右足サボっていますよー。下半身のバランス悪いですよー。」という具合に。
この時身体の状態は、左の足に痛みを感じたり、腰に痛みを感じたりするのですが、左足や腰は全く悪くありません。
悪いのは、力を出せていない右足です。
しかし、この痛みをカラダの声として聞けなければ、左の足や腰の痛みの改善を始めてしまいます。みなさんは、カラダがほんとに求めていることとは反対のことをしてしまうのです。カラダに逆らうと、お知らせは徐々に大きくなったり、範囲が広がっていきます。これが病院へ行ってもなかなか治らない痛みというやつです。
2)カラダに逆らわない生き方
「右足がサボっていますよ!」という代わりに左足に痛みを出す。これ症状としては左足に痛みがあるだけで、右足は?と聞かれても「右足は大丈夫です。」と言ってしまいます。しかし、悪いのは右足です。
冷静に考えて、頑張っている人とサボっている人ではどちらが悪いのかすぐにわかりますよね。しかし、カラダの中でこのようなことが起こると、直接の痛みという被害は自分自身に降りかかりますから、なかなか冷静な判断ができなくなるようです。
この時、冷静に判断ができて、とくに何もしていないのに左足に痛みが出てきたということは、右足がサボっているのでしょう、と右足を意識して刺激をしたり足首を回したりしてみることで、不思議と左足の痛みが和らいでくるのです。
お知らせに答えたので、お知らせを出す必要がなくなったからです。
しかし、お知らせを聞くことができずに、左足を揉みほぐしたり、痛み止めの注射をしたりして、結果的にお知らせを消してしまうようなことをしていると、さらにお知らせは大きくなり、ますます痛みも強くなるのです。
身体のある部分に違和感や痛みを感じたら、そこに意識を集中するのではなく、まずその部分に負担をかけてしまっているかもと考えて、ほかの部分に意識を広げて、体全体を動かしてみることです。左足が痛ければ右足を刺激してみる。腰が痛ければ両方の足首を回してみる。肩が張っているのなら、首や肩ではなく背中を意識して動かしてみるとか。
とにかく負担を分散するように体を動かすことが、お知らせがでないこと、またお知らせをなくすことにつながります。
お知らせには逆らわずに、よく聞くように心がけましょう。