頭痛や肩こり、疲れが取れないなどの大変つらい慢性的な痛みや症状の原因が、自律神経のバランスの異常だと言われています。そして、ネットの健康情報や、メディアなどでも有名な医師などが執筆する健康本などのすべてで、副交感神経が大切、副交感神経優位が健康な状態であるとされています。医学的に考えると、正義の副交感神経に対して交感神経は悪者扱いされている傾向にあります。
しかし、副交感神経優位の状態にするために一番大切なものは、実は交感神経なのです。
この記事では、身体のバランスをひとつの視点として自律神経の役割を考え、いかに交感神経を働かせることが大切かということを理解していただこうと思います。
1.医学では知られていない自律神経の役割
末梢神経のうち自分の意識でコントロールすることのできる骨格系の運動などに関与する体性神経に対して、自分の意識ではコントロールできない内臓系の活動を制御・コントロールしている神経が自律神経です。
「右手を上げて!」と言われれば、すぐに応えて右手を上げることができますが、「血圧を下げて!」と言われても応えることはできません。これは自律神経が血圧を制御、コントロールしているからです。
また、体性神経の運動が、随意的左右分離と言われているのに対して、自律神経の運動は不随意的左右非分離と言われています。難しい言葉ですが、随意的というのは意識して動かす、不随意的というのは勝手に動いているということです。
また体性神経の左右分離というのは、文字通り左と右の運動を別々に考えられるということであり、実際に別々に動かすことができます。
このことは見方を変えれば、左右が違うことをしていても当然だという体性神経に対して、左右非分離の自律神経は左右の動きの違いに結構敏感に気をつかっているということなんです。
つまり、自律神経は身体のバランスを気にする神経だということです。
2.自律神経があなたのためにしてくれていること
身体のバランスが乱れていると、常に自律神経は働いてくれています。起きている時はもちろんのこと、寝ている時にもバランスが悪ければ働いています。意識をしなくても心臓を動かしたり、呼吸をしたりしてくれているのと同じように、バランスの乱れている身体を支えています。
例えば左右の足の働きが全く違う場合。
この状態では意識しなければ本来まっすぐに歩けるはずはないのですが、特に意識することもなく皆さんまっすぐに歩いています。これもまた自律神経の役割であって、特に意識しなくても身体中をうまく使ってまっすぐに歩くようにしてくれているのです。
(実はこの状態は身体的にはかなりの無理はしているのですが…。)
ちなみ左右の足のバランスが常に整っている人なんてほとんどいません。皆さんも知らないうちに自律神経に頼っているのです。
身体のバランスが整っていなければ、常に自律神経のお世話にならなければいけないということです。そして、特にお世話になっているのはリラックスの副交感神経ではなく、戦闘モードの交感神経だということです。
3.交感神経が働くということは?
食事中や睡眠時など、身体がゆったりしている時に働く副交感神経に対して、本来は運動時などの、身体が興奮している時に働くのが交感神経です。しかし、身体のバランスが悪ければ、寝てる時でも食事中でも絶えず交感神経は働いてしまいます。
いえ、働いてくれているのです。
身体を支えるために。
交感神経が働くということは、身体にもそれなりの変化が起こります。
血圧は上昇し、心拍は増加、骨格筋も緊張し、血管も収縮します。
まさしく戦闘モード。
バリバリ働いている時ならばいいのですが、食事中に戦闘モードでは食欲が湧かないし消化も悪くなりますし、睡眠中に戦闘モードになられたら眠ることができませんよね。
寝ているはずなのに疲れが取れない、これがまさしくその状態。
結果的に、自律神経のバランスが悪いということになり、この状態を自律神経失調症と言われているのです。
つまり、様々な不快な症状で悩まされている、自律神経失調症の原因は、身体のバランスの乱れであり、不快な症状は、自らのバランスの乱れた身体を支えるために交感神経が働いた結果なのです。
仮に、バランスが良ければ、無理に交感神経を働かせる必要はなく、楽しく食事ができるし、ぐっすり眠る事もできます。
4.だから副交感神経??
では、交感神経が働かないでいてくれれば、ですよね。
しかし、バランスの乱れた身体は自分で扱うことができません。
まっすぐに歩きたいのにどんどん右や左へ曲がってしまい、普通に立つことや、座ることさえできなくなってしまいます。
だから、バランスの乱れた身体である以上、交感神経が働く必要があるのです。
しかし、今の医療や一般的な健康情報では、この交感神経優位な状態を回避するために副交感神経を無理やり働かそうとしています。
副交感神経はリラックスの神経ですから、そう考えてしまうのも無理はありません。しかし、実際にはなかなかそううまく副交感神経が働いてはくれません。
冷静に考えてみれば、自分自身の身体のために必要があって働いてくれているその状態に逆らっているのですから、カラダが言うことを聞いてくれるはずもありません。
交感神経を働かさないようにするには、副交感神経を働かそうとするのではなく、さらに交感神経を働かせばいいのです。
自律神経は、交感神経がアクセル、副交感神経はブレーキと表現されているようです。
交感神経がバランスを整えようという目的を果たそうとしている時に、副交感神経が途中でブレーキをかけて休もうとしても、目的を達成するまでは交感神経はアクセルを踏み続けています。
それならば、ブレーキを踏むのではなく、アクセル全開でいち早く目的を果たし、ゆっくり休めばいいのです。
5.さらに交感神経を働かせる
シンプルに考えましょう。
バランスの悪い時は戦闘状態。
バランスが良くなればリラックスです。
リラックスすれば、何も意識することなく全ての健康情報が目指すところの「副交感神経優位」の状態になります。
リラックスするためには、身体のバランスが整えばいいのです。
では、バランスを整えるためにはどうすればいいのか?
たくさんの身体のパーツを無理なくムラなく働かせればいいのです。
筋肉や骨格の頑張っている部分とサボっている部分のそのムラが身体のバランスを乱しています。
副交感神経優位という考え方は、この頑張っている部分を緩めようとしているからうまくいかないのです。実際に、痛みなどの症状は頑張っている方に出やすいですから、これも仕方がありません。
しかし、本当に大切なことは、サボっている方に意識を向けて、そのレベルを上げる努力をすることです。
レベルを下に合わせるのではなく、レベルは上に合わせる。
これが大事。
サボっている部分がわかれば、その部分を刺激したり動かしたりすればいいのです。
ベーシックアジャスト(筋稼働力をチェックし全身のムラを少なくする)
(例)弱い部分を刺激する
(例)強い部分を緩める
カラダを支えるために大切なことは、いかに全身の筋肉がムラなく稼働しているかということ。カラダは全身でチカラを分散して支え合ってている。マネキンが 土台なくして自立できないことからもわかるとおり、人のカラダは構造上バランスが悪く、そのカラダを支えるために無意識に頑張っている。頑張らなくてはな らない理由は、頑張っていないサボっている筋肉があるからである。全身の筋肉をバランスよく、ムラなく稼働させるためには、サボっている筋肉を刺激してス イッチを入れてあげること、そして、頑張りすぎている筋肉を緩めてあげることが必要である。
チェックができずにわかりづらい時は、とにかく足首から膝、股関節と身体を刺激して動かしてみてください。
足首を刺激する
膝を刺激する
この意識して動かすことが交感神経を刺激して、サボっている筋肉に瞬間にスイッチが入ります。
レベルを上に合わせることができるのです。
また身体を山折りにする「山折り健康法」も簡単に身体のバランスを整えることができます。
MFストレッチ(カラダを山折りにする)
ペ ラペラの1枚の紙は手を離すと倒れてしまうが、山折りにすると手を離しても立たせることができる。カラダを山折りにする、または山折にするイメージをもつ ことで、無駄な力を使うことなくカラダを支持することができる。なお、紙であれば谷折りでも立たせることができるが、人間の場合は谷折りにすると骨格の構 造上猫背になりやすく、俗に言う悪い姿勢になる。山折りにすることで、カラダは自然にいい姿勢を保つことができる。
そもそも、この交感神経を刺激して一瞬の戦闘状態を無意識に利用している人はたくさんいらっしゃいます。
無意識に身体を動かす、いわゆる「くせ」というのも身体のバランスを無意識に調整しているその人の動作です。
また良いことではないですが、歯ぎしりや貧乏ゆすりなんかも無意識のバランス調整であり、余談ですがこれらはバランスを整えることで改善することもできます。
さらに、海へ行って「バカ野郎!!」なんて叫んだりするのも、一瞬の交感神経でスッキリ!って感じです。
しかし、物にあたったり、大声で叫んで人に迷惑をかけたりするよりも、一番のオススメは「感動」です。
感動は、その瞬間に身体のバランスを整え、身体をリラックスの状態に導き、副交感神経優位のあなたにしてくれます。
いい映画を見たり、いい曲を聴いたり、美術館に行ったり、人それぞれの様々な感動は周りにたくさんあるはずです。
しかし、中には感動なんてしたことがない、なんて人もいらっしゃいます。
そんなあなたには、やはり「山折り健康法」がオススメです。
まとめ
一般的な健康情報のほぼ全てで、副交感神経を働かせると健康になる、副交感神経が人生の質を決めるとさえ言われています。確かにその通りかもしれません。しかし、これは例えるならば、お金持ちは幸せだからお金持ちになろう!と言っているのと同じです。
一攫千金は例外として、お金持ちになるにはそれなりに働き、頑張り苦労するというその過程が必要だということは誰もが納得できることだと思います。
同じように副交感神経の状態にするには、それなりの過程が必要なのです。そこで活躍するのが交感神経だということです。交感神経を有効に働かせることができれば、副交感神経のことなんて考えなくてもいいのです。